建物の賃貸借契約の原状回復

建物の原状回復には3つの基本原則があります。
原則1 通常損耗は、賃借人の負担ではない
通常の使用に伴う汚損、損傷は、賃料支払いと対価関係にあります。

原則2 通常損耗を超える汚損、損傷は賃借人負担
通常の使用方法を超えて、特別の使用をしたり、不注意による場合は、賃借人が修理義務を負います

原則3 賃借人負担となる修理、交換の範囲と負担割合には合理性が必要である
例えば、20年使用できるドアが、10年目に賃借人の不注意によって壊れてしまい、新しいものに買い換えることになったとします。
20年使用できるドアが10万円とすると、10年は通常使用できたので半分の5万円は賃貸人が利益を得ていたことになります。
ですので、賃借人は5万円を賃貸人にドアの買い替え費用として支払うことになります。

全額賃借人が支払うことには合理性がありません。

では通常損耗を賃借人負担とする特約は有効でしょうか?

通常 特約(契約)は意思表示の合致のみで成立します。
しかし、通常損耗の特約については、最高裁で合意の明確性が必要であると判断されています。

合意の明確性とは?

①通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項に具体的に明記されていること
契約書の最終ページに、部屋の様々な箇所の負担について書いてある表がそれです。

②賃貸借契約書で明らかにならない場合に、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がしっかり理解し認めていること

また、この特約が消費者契約法に10条に違反するのでは?
という問題もあります。事案によりますが、あまりにも消費者(賃借人)に過度の負担や義務をかけている場合は無効という判決もでています。
また、逆の判決もあります。

裁判で争うことができる可能性はあっても、実際は少額な案件で裁判を起こすと費用倒れになってしまします。
多くの人は裁判を選択できないでしょう。

実際に、部屋を借りる時に、契約書の内容をそこまで確認する人は多くありません。
しかし、通常損耗の場合に、賃借人が修理義務を負う特約は多いのです。

しっかり読んでこころの準備をしておきましょう。
また、入居の時に、壊れかけの部分があった場合は、事前に修理してもらうほうが良いでしょう。

当事務所では、賃貸借契約書の作成も行っています。
個人の方で、自宅を知人に貸す場合など、口頭契約ではなにか問題がおこったときに困るケースがありますので、ご利用ください。
契約の解除、相続の発生など依頼者様の状況に合わせて様々なことが起こるケースを想定しながら契約書を作成します。

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